ゴッホと補色について
補色とは
色相環で正反対に位置する関係の色の組合せのこと。上図の色相環は、黄色を起点に色相差の関係を示したものです。黄色の正反対に位置するのは青紫なので、黄色と青紫は補色の関係にあります。
同じように、色相差が12の関係になる、黄緑と紫、緑と赤紫、赤と青緑といった組合せも補色に該当します。補色とは、コントラストの強い配色です。
補色を用いた作品の紹介
ゴッホの「ひまわり」は補色を利用した作品です。
パリにいたゴッホは当時最新の色彩理論である「補色」を学んでいました。
「ひまわり」はその時期に描かれた作品であり33歳から35歳の3年間で7作品も描かれています。中でも黄色の補色である青背景とひまわりを描いた作品があります。
補色以外に黄色の背景に黄色のツボ、黄色のひまわりで描いた作品も印象的です。黄色に統一して筆遣いのみで対象を表現させた作品です。
黄色い背景のひまわりを描き終える一週間前、ゴッホは弟テオにあてた手紙の中で次のように語っています。
「ある意味、僕にはひまわりがある」。またゴッホが敬愛してやまなかった画家ポール・ゴーギャンは「黄色い背景のひまわり」はゴッホの「本質を表した完璧な一枚」と絶賛されています。
「夜のカフェテラス」も補色の代表例ではないでしょうか。こちらはオランダにあるクレラー=ミュラー美術館にある作品で1888年9月ゴッホは弟テオにアルルの夜についてこう語っています。
”昼よりも夜のほうが生き生きとしていて色彩に富んでいる”。
ゴッホにとってアルルの夜は薄明りの澄みきった青い空と星空の白い光。カフェテラスの席を照らす黄色の光とその光を受けたオレンジと青、濃紺の石畳の道。すべてが強烈な色を放つ昼間のアルルとは別物の色に映ったのでしょう。
ゴッホはこの作品で闇夜の色である黒をどこにも使わずに青色と黄色で夜のカフェテラスの賑わいを描きました。
また、このランタンは周りと同じ色を用いつつ一番強い光を表現するためあえて筆跡が残るように厚塗りしています。こうしたテクニックは先ほどの黄色い背景のひまわりと同じ傾向が見れます。
ひまわり、夜のカフェテラスは長年の研究成果の一つであり、それゆえに自他共に認める代表作となったといえるのかもしれません。特にひまわりはゴッホが感情のおもむくままに絵筆をとった画家ではなく、何度も試行錯誤を繰り返しながら、自らの芸術を築きあげた画家であった証なのです。